被災時の備え
日々報じられる能登半島地震のニュースを見るたび、現地の大変な状況を案じています。地震からまもなく1ヶ月になりますが、先の見えない避難生活に皆さん大変なご心労を抱えていることと思います。被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。ここに来て、一部地域で一般ボランティアの受け入れが始まったとのこと。これを機に復興が少しでも前進することを祈ります。と同時に、ご自身の生活もある中でボランティアに参加されている方々には本当に頭の下がる思いでいます。
少しずつ歯科の分野の支援も始まっていると聞きます。歯やお口の不具合は精神的なストレスの原因にもなりますし、食事が摂れなければ体力低下にもつながってしまいます。歯のトラブルは命の危険には直結しないことが多いので後回しにしがちですが、決して侮ってはいけないのです。口腔ケアにおいては、長く続いている断水が非常に大きな問題となります。
災害関連死の原因となりやすい肺炎、特に誤嚥性肺炎がお口の中の細菌と関連していることが明らかになっているのです。実際に肺炎になった高齢者の肺から見つかるのは、歯周病原細菌が最も多いとされます。加齢などで飲み込む機能が弱ってくると、食べ物や唾液が気管に入ってしまうことがあります。この時にお口の中の細菌が一緒に入り込み、肺炎を起こした状態を誤嚥性肺炎と言います。断水によりお口のケアを満足に行えない状態が続くと、細菌が増えやすい環境となります。さらに避難生活によるストレスや睡眠不足で体力が低下すると誤嚥しやすくなり、結果として誤嚥性肺炎のリスクが高まってしまうのです。
被災時に誤嚥性肺炎を発症しないようにするには、平時からの備えが必要です。普段からお口の中の細菌数が多い人ほど、誤嚥性肺炎のリスクは高まります。ですからお口のトラブルは早めに治療を、また自覚症状が無くても定期的に歯科検診とクリーニングをして、お口の中を清潔に保っておくことが必要なのです。
非常用品の中に洗口液を用意しておく事も、備えとして有効です。多くの洗口液には殺菌作用が含まれていますので、これを使って口をゆすぐことで細菌数を減らすことができます。また、洗口液の使用は口臭予防にもなりますし、爽快感を得ることもできます。洗口液に含まれるアルコールに刺激を感じて抵抗のある方もいらっしゃるかもしれませんが、アルコール無配合の製品もありますので普段から試してみるのもいいと思います。
災害はいつ起こるかわかりません。もしもの時の備えとして、日頃からぜひお口の健康にも気を配っていただきたいと思います。