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エナメル質のフッ素
診療室の窓から見えるハナミズキの葉も赤く色づき始め、紅葉の季節になりました。
行楽地の賑わいも今が一番のようです。
先週末、横浜のみなとみらいで開かれたエナメルシンポジウムという学会に顔を出してきました。
世界各国から集まった研究者たちの地道な成果を聞きながら、澄みきった秋のすがすがしさ
を感じてきました。エナメルシンポジウムとは、歯の一番表層にあるエナメル質のことを様々な角度から検証しようとする研究者たちの発表会です。
光学顕微鏡レベルから電子顕微鏡レベルの分子構造までを健全歯とむし歯での違いや、はえたばかりの歯から60年以上も使った歯までを経年的に観察したり、
再石灰化のメカニズムを解明したりと私にはとても興味を引かれる学会でした。
今回はそのときの発表の中からひとつのトピックをご紹介しましょう。
私たちが毎日使っている歯は、人工物では補いきれない構造を持った、硬組織です。
その中でもエナメル質は、歯の一番表層に位置するまさにエナメルのような艶を持った硬い結晶の集合体で、
エナメル芽細胞という上皮細胞から分化した細胞から作られます。
生えたての歯のエナメル質は体内の成分だけでできていますが、日が経つと共に色々な物質が外来から取り込まれて行きます。
私が興味深く聞いた演者は、エナメル質に含まれる無機物質に着目して、表層から象牙質の境目まででどのような違いがあるのかを分析して発表していました。
私は、その中でも特にフッ素分子について興味をもって聞いていました。
エナメル質の結晶にフッ素分子が含まれているのは、表層のごく一部分であること、磨り減った歯の表面にはフッ素が無くなってしまうという事でした。
一方、むし歯になると分解された結晶の中にまたフッ素分子が検出されたということでした。
この事はすなわち、まだ結晶が疎雑な若いうちにフッ化物塗布などで積極的にエナメル質にフッ素を沈着させると、
硬い結晶が作られ強い歯になることを示しています。
また、初期のむし歯も結晶が疎雑になるため、そこにフッ素分子が入り込んでくるのです。
つまり、まだ歯に穴が開く前の初期のむし歯にも、フッ化物塗布が有効であるということです。
再石灰化のメカニズムは、以前にもお話しましたが、これにフッ素が介在すると更に固い結晶が作られるのです。
今回は少々難しいお話になってしまいましたが、私がいつも行っている、定期健診とフッ化物塗布が大切だという事が、
基礎的研究で改めて裏付けられとても嬉しく思いました。
皆さんもフッ素入り歯磨き粉を使って毎日歯を磨いて、むし歯を作らないように頑張ってください。
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