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警察歯科医会に出席して
相変わらず連日猛暑が続く中、くれぐれも熱中症に気をつけてください。
先週の土曜日に神戸で開かれた警察歯科医会全国大会に今年も参加してきました。
震災後の神戸に初めて訪問しましたので、まず震災の資料館である、人と防災未来センターに向かいました。
震災後に埋め立てて作った、復興住宅の一角にそれはありました。
当時の模様をジオラマの模型や記録映像で紹介するとともに、被災から復興までの道のりをいかに辿ったかを詳細に記録した物でした。
当時を思い起こしながら防災の大切さを改めて考えさせられました。
そこを出て、学会場のポートピアホテルに向かうタクシーからの景色はきれいな町並みで、
あの瓦礫の中からよくここまで復興したものだと驚かされました。
しかし運転手さんの話では、15年も経つともはや市民の災害に対する心構えは風化しつつあるとも聞かされました。
もともと神戸は、地震の全く無かったところで、あれ以降小さな地震すら一度も起きていないからなのかも知れないとも言っていました。
警察歯科医会の全国大会は、毎年各県の持ち回りでそのつどテーマを掲げてディスカッションを行っています。
第9回目の今年は、警察歯科医の存在を広く市民の皆さんに知って頂くために市民参加で開催されました。
よく新聞の社会面に出てくる、「歯型から身元が判明」という一行の記事の裏には、多くの人の協力があるということが話されました。
先ず、警察より要請を受けた警察歯科医が、ご遺体の口腔内の記録をとります。
次に、これが全国の歯科医の許に配信され、レントゲン写真などの診療記録からその人らしいと報告が上がってきます。
生前の治療記録と、警察歯科医が記録した死後の記録が、大学の法歯学教室などの協力を得て検証され、同一人物か如何かの鑑定が行われます。
これらが合致すると身元が特定され、再び警察によって確認の後、遺族の許に知れされ、先程の新聞記事になるのです。
死体が発見されると、警察歯科医は、警察の次にご遺体と対面し、正確な記録を作るという重要な役割を担っています。
例えば、歯科診療所からそれらしい方の記録が提出されたとき、むし歯治療がされているはずの歯が、もしこの記録で治療の痕が無いとします。
この場合、提出された記録よりも後に、この方が当該歯牙の抜歯をされ健全な歯を移植されているか、全くの別人かということになってしまいます。
勿論途中で確かめる事はしますが、その手間は計り知れなく、初期に正確を期すための確認作業は大変なものなのです。
私たちには当たり前の、そんな話を聞いていた一般市民からはホーというざわめきが起りました。
他にも今回は特に阪神淡路大震災とJR福知山線脱線事故の経験を踏まえた活動報告などがありました。
続いて元内閣安全保障室室長の佐々淳行さんの特別講演があり、日頃からの危機管理の持論を熱く語っておいででした。
備えあれば憂いなしというのは簡単ですが、いつ起こるとも分からない災害に備えることの難しさを改めて考えさせられました。
日頃から水や保存食を含めた、避難用品を備えておくと同時に、いざという時どのように行動するかを各家庭で話し合っておきましょう。
他の演者の一人が阪神淡路大震災のときの体験談を話されていたのをご紹介します。
その日はたまたま出張で、家族の安否を思いながら必死で家に向かったそうです。
瓦礫の脇に子供が倒れているのを見つけ、わが子もこんな目にあってはいないかと益々心配になり、その場を通り過ぎかけ、ふと思いとどまりました。
もしわが子もこの子と同じように倒れていたら、きっと誰かが助けてくれているだろうと、その子の救助に戻ったそうです。
とても印象深い話でした。
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8月の歌舞伎座 (2010/8/19)
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