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 コラム 第89回     2011. 11. 28

がんばれ東北

 今年も朝晩は、めっきり冷え込む季節となりました。東北の被災地では、もう雪のちらつくところもあるようです。 仮設住宅では、この冬の寒さ対策が急ピッチで進められていると聞きました。 どうぞお体を大切にお過ごしください。

 今年の警察歯科医会全国大会は、岩手県盛岡市で8月に開催されることが、昨年の神戸大会の時に決まっておりました。 しかし、3月11日の大震災で延期され、11月4日金曜日の開催となりました。 開催地を変更するか中止かとの声もありましたが、岩手県歯科医師会の強い希望で、時期をずらして予定通り開催されることになりました。 私は、京橋歯科医師会の警察歯科医会副会長なので毎年参加しておりましたので、平日でしたが休診させていただき、参加してまいりました。 今年は、ほかに2名の理事を連れて行くこととなり、前日の祝日の朝から出かけてきました。 東北新幹線を一関で降り、毛越寺、平泉中尊寺とお参りしてレンタカーで陸前高田と大船戸と三陸海岸線を北上し、盛岡へと向かいました。

 本院のある南海東京ビル1階には岩手銀河プラザという岩手県のアンテナショップがありますが、 今年6月に平泉中尊寺が世界文化遺産に指定されたときの盛り上がり様は大変なものでした。 3月11日の後、物産店でありながらほとんど空っぽになってしまった陳列棚の脇には、行方不明者名簿や避難所名簿の閲覧所ができ、 地元の中学生やボランティアたちが、毎日のように義援金募金のお願いをする姿がありました。 ですから世界遺産決定の知らせは岩手県人にはとても大きな力となったのでしょう。 理事3人での盛岡行きが決まった時、当然のように中尊寺でお参りをして被災地を巡り盛岡に向かうルートが決まりました。 中尊寺は、丁度見事な紅葉の見頃と文化の日と重なり、大変な人出でした。

 震災から8か月経って東北に人々が戻り、復興に向け着実に歩んでいる感を持ち、陸前高田に向かいました。 車を走らせた道中もあちらこちらで、文化の日のイベントなどが模様されていて、 「負けないぞ」とか「がんばろう東北」などと書かれたのぼりをたくさん見ました。 陸前高田臨時市庁舎のある丘を越え、木々に囲まれた路を下ってゆくと突然景色は一変しました。 何キロも先の海岸線まで、ただ道が続くだけで何もありません。はるか向こうに鉄筋の建物が2棟だけ残って建っていました。 しかし、近づくとそれは、廃墟となった陸前高田病院と、その職員寮でした。 3階建ての屋上まで津波の爪痕が生々しく、手を合わせずにはいられませんでした。 がれきが整理されて建物の基礎だけになった周りのどの場所もにぎやかな営みがあった所だと思うと、言葉が見つかりませんでした。

 翌日の警察歯科医会は黙とうから始まり、困難を極めた身元確認に奮闘した地元の歯科医師たちのご苦労に頭が下がる思いで報告を聞きました。 彼らの労苦をねぎらうと共に、反省点、改良点の討論を行い閉会となりました。 被災直後から現在も続いている、青森、岩手、宮城の3県での身元確認の結果、97%の方がご遺族のもとに帰ることができたことをお伝えしたいと思います。 津波によって歯科診療所も流され、カルテやレントゲンなどの生前記録がない中での、この数字は、世界中から驚きと高い評価を得ています。 まだまだ行方の分かっていない方も多く、この方々も一刻も早く身元の確認がされることを祈っています。

 今回の行程中、被災地のどこへ行っても「負けないぞ」、「がんばろう東北」ののぼりはあちらこちらでたなびいていて、 プレハブで営業中の食堂や商店も見かけ、東北人の強さを感じ、逆に勇気付けられて帰ってきました。


11月の歌舞伎座 (2011/11/16)

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