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 コラム 第105回      2013. 03. 28

ステファン曲線のお話

  真夏日があったかと思うと真冬日に逆戻りと、定まらない天候に体が悲鳴を上げています。 しかし、例年よりも早く桜が満開となりました。 歌舞伎座のオープンも数日後に控えて、連日大賑わいとなっています。 春の訪れと共に、人の流れも戻り、心も和やかになっています。

  先日テレビを見ていましたら、食後すぐに歯を磨くと歯がなくなってしまう、と言って皆を脅かしているお医者さんがいました。 よく聞いてみると、食事をすると歯の表面は酸によって脱灰されるので、直後に歯を磨くと徐々に歯が磨り減ってしまいますということでした。 更に食後30分くらいは放置しておけば、唾液の力で歯は再石灰化してくれるので、磨くならそれからにして下さいとも言っていました。

  口腔内は普段は中性ですが、食事をすると酸性となります。 それは食事の2分後くらいから始まり、5分くらいで最も酸性度が高くなります。 その後はおよそ30〜40分かけて唾液が中性に戻してくれます(これを唾液の緩衝能といいます。)。 この現象はステファン曲線として、昔からむし歯予防の話によく使われ、食事の後すぐ歯を磨かないとむし歯になりますよ、といわれている根拠にもなっています。 だらだら食べや間食を多くすると酸性の時間が長くなって、歯の表面のエナメル質が酸で溶けてしまうので、むし歯のリスクが増えます、 というのがステファン曲線からの警告でした。 これを最近は、口腔内が酸性の時間を脱灰のステージ、唾液の力で中性に戻っている時間を再石灰化のステージとする考えがあるようです。 ですからテレビに出ていたお医者さんの発言につながるのでしょう。



  しかし私は、歯ブラシをする事で、再石灰化に必要なエナメル質の成分を削り取ってしまうと考えるよりも、 脱灰の原因を作る酸や細菌の塊である歯垢を早く口腔内から排除することのほうが、むし歯を作らないし、 そんなことで歯は磨り減ってなくなりはしないと考えていました。 脱灰された歯の表面に唾液が直接触れていたとしたら、再石灰化も起こる可能性はありますが、実際の口腔内では歯垢がついてしまって これを放置しておくことのほうが、むし歯のリスクは高いのではないでしょうか。 私は、如何にしたら酸性の時間を短く出来るのかを、優先させるべきだと考えます。 私たちのもっている唾液の力は、口腔内を中性に保つだけでなく、他にもすごい力を持っています(コラム第8回)。 その力を大いに発揮させるためには、きれいな唾液であることが大切です。 うがいをして歯ブラシをして口腔内の細菌を減らせば、サラサラのきれいな唾液が湧き出てきます。 これからも私は患者さんには、食後はなるべく早く歯を磨きましょうとお話しようと思います。


3月の歌舞伎座 (2013/03/27)

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