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 コラム 第116回      2014. 2. 28

骨吸収のお話

  関東地方に二度も大雪が降り、各地で多くの被害が出てしまいました。 雪国においては毎年のことと思うと、たった2日間の降雪で悲鳴を上げては申し訳ない気がしました。 同じ雪でもサラサラな軽い雪と、ベチャベチャな重い雪があることを、初めて実感しました。 3月に入っても時々大雪に見舞われる都市もありますので、まだまだ油断は禁物だと思います。 慣れない雪かきで骨折したり、腰を痛めたりした方も多くいらしたようです。しばらく経ってから、歯の痛みを訴える方も多く見受けられました。

  この時期の歯の痛みは、以前にも書きましたように(コラム第6回 歯を食いしばる) 食いしばりが原因ということがよくあります。 寒いので奥歯をぎゅっと噛み締めて筋肉に力を入れて体温上昇を促すというものです。 筋肉を動かすことで血行を良くして体の中から体温を上げるのですが、そのとき食いしばっている歯の根の周りは、圧を受けて血行不良になっています。 ですから食いしばるのをやめたときに一気に血液が流れ込み、歯が浮いたように感じたり、神経が圧迫されたりして痛くなるのです。 この状態が何度も繰り返されると圧を受けた場所の骨の中に、破骨細胞が増えて歯を支えている骨が吸収されてしまうのです。 歯を支えている骨と歯の根との間には歯根膜というショックアブソーバー的な組織があるのですが、この組織が圧迫によって広がると、 歯とその周りの骨との間に隙間ができます。このことを専門用語で、歯根膜空隙の拡大といっています。

  歯根膜空隙の拡大した状態がさらに進むと、歯に揺れが生じて歯の根の周りから骨がどんどん吸収されていってしまいます。 歯の根の先端に向かって垂直に骨が吸収してゆくので、これを歯槽骨の垂直的骨吸収といいます。 歯槽膿漏のように細菌の感染から逃れようと、縁から徐々に吸収してゆく、水平的な骨吸収と区別しています。 水平的な骨吸収は、歯冠の側から徐々に吸収され表面が汚染された状態の根が露出してしまうために、 その部分にまた元のように骨が伸びてきて回復するということが見込めないのに対し、機械的刺激で吸収された非感染型の垂直的骨吸収は、 過重な負担を軽減し安静状態を保つことで元に戻すことのできる骨吸収の形です。 突然揺れだして、噛むと違和感や痛みを自覚したときは、なるべく早く歯科を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。 早ければ早いほど、元に戻る確率も高くなります。何よりもこの季節にあまり食いしばらないようにすることが肝心です。

  もうじき春がやってきます。もう少しの辛抱です。


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