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 コラム 第135回      2015. 9. 28

舌のブラシのお話

  今年は猛暑が続き、秋の訪れは先になるだろうと思っておりましたが、「暑さ寒さも彼岸まで」の通り、凌ぎやすくなってきました。 そしていよいよ実りの秋、食欲の秋、到来です。美味しい物をよく噛んで、秋の味覚を楽しみたいものです。

  このところ歯ブラシのお話が続きますが、美味しくいただいた後は、きちんと歯ブラシをしませんと、 せっかくの美味しい物の味が、美味しくなくなってしまいます。 以前にもお話しましたように、舌の表面のザラザラしたところには、味を感知する味蕾というものがあります。 舌を鏡で見ると、イチゴの表面の種のように見える赤ピンク色の場所に味蕾があります。 その周りの白っぽく髭のように見えるのが糸状乳頭という粘膜を保護するための乳頭です。 糸状乳頭の隙間は、細菌にとっては快適な棲家になります。

  人の体は、細菌から身を守るために様々な変化で対処します。 舌の場合、糸状乳頭が伸びて奥深い場所まで細菌が侵入するのを防いでいます。 すると、味蕾の先端が、伸びた糸状乳頭によって隠れてしまいます。 結果として、味を感じにくくなるわけです。 舌を見て、表面が白い人は糸状乳頭が伸びている可能性が高いです。 健康な舌の表面はピンク色をしています。 調理する人がこうなった時は、濃い味になってしまうこともあります。 料理する側も、食す側も、舌をきれいに保って、美味しい物を美味しくいただきたいものです。

  舌に住む細菌は、口腔内常在菌の中でも、歯垢の細菌とほぼ同じと言われています。 ネバネバした細菌で、うがいだけでは取れず、ブラシで擦らないと取れません。 しかし、舌は粘膜ですので擦りすぎると、表面を傷つけてしまいます。 最近は、薬局でもスーパでも舌ブラシを売っていますので、毛先の柔らかい専用の物を使いましょう。

  歯ブラシでしっかりと歯をお掃除することで、余分な口腔内細菌の数は十分に減らせます。 そのような環境を続けると、特に舌ブラシを当てずとも、糸状乳頭が元に戻って、舌の表面はピンク色になります。 すると美味しい食事が一層美味しくなって、笑顔で楽しい食事ができます。歯磨きの効用はこんなところにもあるのです。


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