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 コラム 第192回  2020. 06. 25

口角泡を飛ばす

緊急事態宣言が解除になり、少しずつ街ににぎわいが戻ってきました。 しかし、新型コロナウイルス感染が終息したわけではなく、まだまだ油断のできない日々が続きます。 臨床現場での闘いに加え、世界中の研究者がこれまでのデータを基に、このウイルスの特性を解析し、多方面から打開策を導いているところです。 しかも、最新のニュースで、理化学研究所が開発したスーパーコンピューター「富岳」が解析に用いられ、大活躍をしていると言う事です。 この先は、それによって今までのような爆発的な流行は抑え込まれてくることでしょう。 しかしそこには、私たち個人が生活の中で自己防衛を徹底し、感染リスクを抑える行動が重要になります。

自粛期間中から報道番組を見ることが多く、各分野のコメンテーターがテレワークで意見を述べているのをよく見ます。 一人で待機しているせいか、司会者から指名されると、皆さんかなり長時間しゃべり続けることが多いように思います。 ふとしたきっかけで話の中身より、話している人の口角がだんだん白くなっていくのに注目してしましまいした。 「口角泡を飛ばす」という言葉があるように、夢中で話をするうちに口角に粘液が泡状にたまって白く見えてくる状態を表現したものです。 皆さんも緊張すると口の中がカラカラに乾いてしまうことを経験したことがおありだと思います。 これは、興奮すると漿液性唾液というサラサラな唾液が交感神経の働きで、出にくくなるからなのです。 すると粘膜表面を覆っている粘液性の唾液が優位になり、お口の中がネバネバして泡となり口角にたまった状態になるからなのです。 この現象は、ただそれだけではなく、人によって程度の差が大きく現れます。 普段からお口の中がネバッこい方と、サラサラしている方がいらっしゃいますが、これは、口腔内細菌の種類や量にも左右されているのです。 寝る前に歯を磨かずに朝を迎えると、口の中がねばねばしていることに気が付くことがおありだと思います。 これは、寝ている間に口の中の細菌が増えているからなのです。

口腔内の細菌が増えると、呼吸する息にも細菌が多くなり、それが肺炎の原因になることは、よく耳にしてご存知のことと思います。 また、特に緊張状態でもなく普通に話をしていて口角に白く泡が溜まるのは、心臓病の兆候だと言う話も聞いたことがあるかもしれません。 このことは、いつもお口の中がねばついている人に多いようです。歯の周りに歯垢が溜まり、舌背が白い方には歯周病にかかっていることも多くみられます。 そのような方は、歯茎がブヨブヨしていて赤く、歯ブラシで出血するような状態でもあります。 細菌やウイルスは、その敗れた血管から容易に血管内に入り込み、全身に回り細菌性心内膜炎や弁膜症といった重篤な病の原因にもなっています。

コロナ対策で手洗い消毒が徹底されてきている今、口腔ケアにも努めて、健康習慣を身につけましょう。 口腔内細菌を減らし、きれいな唾液を出して、細菌やウィルスに負けない強い体を作るよう心がけましょう。



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